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SHARPのスマホ部門が失敗してしまった3つの理由 〜復活の足がかりとなるものは〜

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なぜSHARPのスマホ部門は失敗してしまったのか。考えられる原因は大きく分けて、3つあります。決して製品自体が悪かったからだという単純な話ではないのです。(本記事は寄稿によるものです)

筆者:沢田渚

 

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1.スマホ部門が不振に終わった4つの理由

実はまったく売れていないわけではございません。意外に思われるかもしれませんが、IDCが発表している国内のメーカー別スマートフォンシェアを見ますとSHARPは頻繁に2位に躍り出ています。

2016年第3四半期 国内スマートフォン出荷台数 ベンダー別シェア

 

1位のAppleとでは天と地の差で比べるまでもありませんが、2位の座をめぐってはソニーとは熾烈なシェア争いを繰り広げていたのです。しかし、利益をほとんど計上できなかったのもまた事実。

たとえ赤字にはならずとも、最先端の技術が次々投入される買い替え需要の高いスマートフォン市場において利益を計上できない程度の売り上げでは、AQUOSブランド液晶の広告塔という役割を鑑みるに至らなかったのでしょう。ここは後述しますがアピールするはずの液晶の質に問題があった端末もあり、到底広告塔にはなりませんでした。

また、筆者のほうでAQUOSブランドに関する簡易的なアンケートを複数のSNS上にて行ったのですが、AQUOSブランドのイメージとしてスマートフォンの中で挙げられたのはAQUOS CRYSTALシリーズ程度でした。特にAQUOSブランドとしてのイメージが強く、解答数が多かったものは“世界の亀山モデル”で知られるAQUOSテレビでした。

ではなぜAQUOS フォンは広告塔にならなかったのでしょうか。その理由を、中国OPPOをモデルに比較、考察していきます。OPPOは一気にスマホシェア世界4位までのし上げた中国メーカーです。

OPPOはフラッグシップモデルでありながら、ミドルレンジ帯に相当するSoCを採用しています。それでも中国でのシェア1位。カメラ性能が高く、綺麗に風景やセルフィーすることが可能であること、必要なときにすぐに使い始められる急速充電、この2本柱を売りにグリーンをイメージカラーとして広告をだし、成功を収めているメーカーです。

一方SHARPもリコーのGR認証を通過したレンズを採用するなどカメラに力を入れているほかにも、急速充電技術で勝負をかけたOPPOと似ており、元々の消費電力が小さなIGZO液晶を採用することで、ロングバッテリーライフを実現しようとしました。必要な時にいつでも使い始めることが出来るという点で似たような戦略をとっていたといえます。

鴻海主導となった新生SHARPはOPPOを意識したのかセルフィーに力を入れたAQUOS SERIE mini SHV38AQUOS Xx3 mini 603SHを発売しました。

では、4つの理由を述べていきます。

1.販売網の薄さ

SHARPはよく、キャリア奴隷などと揶揄されるほど、キャリアの販売網に依存しています。キャリア以外の販売網が弱いのです。

ソニーモバイルのXperiaのように海外展開をして一定のシェアを収めることもできませんし、OPPOやAppleのように専門店を設けるといったこともしていません。販路が少ないことが問題として掲げられます。その結果が大手3キャリアで投入するモデルが全てバラバラで統一的ではありません。また、総務省の値引き規制により、大打撃を受けることにつながっていきます。 

それならばSIMフリー市場で戦えば良いではないかと思われるかもしれません。しかし、激しい価格競争が繰り広げられるSIMフリー市場では、売れ筋価格はせいぜい2万円台。人件費などの問題で製造コストが上がりがちなSHARPがシェアを確保することが難しいのです。

一方OPPOはオフライン・オンライン両方での販売を重視し、旗艦店を始めとした実店舗を様々な都市で展開して販売網を構築。実店舗で販売することのメリットとして展示機を体験出来る、サポートを提供できることにより安心感を与えることができるといったものが挙げられます。

 

 

2.圧倒的な広告不足

SHARPは広告を軽視しすぎているように感じます。事実、2015年に東洋経済が記事にした「広告宣伝費」トップ500社ランキング2015ではランクインしていませんでした。ただし、この内訳は開示されている販管費からランキング化したものなので、事実とは異なります。実際は50位以内にランクインしていると思われます。細かい内訳については不明なためなんともいえないですが、所感として、高価格な路線を進むメーカーのほとんどが大量の広告を打ち、ブランド維持やイメージの固定化に力を注いでいるのに対し、SHARPは広告に関してはやる気があるように思えません。テレビ広告でAQUOS Phoneを見かけることはありません。

電池持ちの良さや接写に強いカメラ、グリップマジックといった独自機能は基本はAQUOSの全モデルに搭載されており、実に様々なセールスポイントがあるのですが、あまり周知されていません。もったいない話です。

また、キャリアごとに投入するモデルを分けていたことも広告不足に拍車をかけます。Xperiarなどは2014年以降、どのキャリアにも同じモデルを提供していたためその時期投入したXperiaの広告だけ打てばよいのですが、SHARPが広告を打とうとした場合3つの機種それぞれ広告を打たねばならないのです。

広告を打たなかったことによる弊害としてこんな例があります。

SHARPが世界初の三辺フレームレス端末としてAQUOS CRYSTALを発売したとき、ほとんど広告を打っていなかったため日本ではあまり話題になりませんでした。AQUOS CRYSTALは米キャリアであるSprintでも発売されており、むしろアメリカのほうで盛り上がっていたように感じます。

それから数年後、中国のスマートフォンメーカーがAQUOS CRYSTALと同じような3辺フレームレス端末を発表したのですが、その際に日本のいくつかのブログが世界初のフレームレス端末だと紹介する事態になったのです。日本での話題性がいかに欠けていたのかが如実に表れています。

一方OPPOの広告をみると、街頭のオフライン広告ではイメージカラーである緑を背景と若者、そして旗艦機種の画像をのせ、OPPOブランドのイメージを固めるシンプルなものを採用しております。

この手法はAppleやHuaweiといったブランドの多くが採用しており、ブランド維持、イメージの固定化などに効果があることがわかります。後追いだろうが高価格路線を貫かざるを得ない日本メーカーである以上、真似せざるを得ないでしょう。

3.OSアップデート問題

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これはキャリアスマートフォンにもいえることです。昔のSHARPは、OSのアップデートに対して積極的ではありませんでした。各キャリアにそれぞれ別のモデルを提供していたため、開発が難しかったという理由もありますが、アップデートをしてしまうと買い替え需要が減ってしまうという危機感もあったことと思われます。あるいは各キャリア向けにソフトウェアを制作する予算がなかったということだったのかもしれません。

しかし、Samsungやソニーといったグローバルに積極的に展開しているメーカーを覗いてみると、その多くがOSアップデートを行っています。つまり、OSアップデートを提供することによる買い替え需要の低下や開発費用などよりも、OSアップデートをしないことのほうがイメージの低下に繋がりかねません。

OSのアップデートの不提供というのは悪手であったと言わざるを得ないでしょう。多くの人にとっては高価な機械であるスマートフォンですから、実際にそれだけの期間使うかはともかく、長く使えるかどうかというのは重大な機種選定基準になるように思えます。

4.黎明期のイメージを引きずっている

実はSHARPはAndroid 1.6時代からスマートフォンを製作している老舗メーカーです。そのため、黎明期の使い物にならないAndroid OSやチューニング不足に加えプリインストールされているアプリの多さも相まって到底iPhoneには敵わない製品たちというイメージがついてしまい、それが現在のイメージにまで影響を及ぼしているのです。これは富士通や東芝、NECなどでもいえることですが、SHARPも同様です。

その後、 SHARPはいわゆる“全部入り”をウリにした他社を圧倒するハイスペックモデルを市場へと出し続けることになります。この頃のSHARP端末は不具合も多かったものの、新しい機能を次々と盛り込んだハイエンド端末であったため概ね消費者の反応は良かったように感じています。

AQUOS ZETA時代のSoCはバッテリー消費の少ないものを利用していました。さらに、IGZO液晶で画面の消費電力を抑えることが可能であったAQUOSはハイスペックでありながらパフォーマンスと電池持ちを両立させることができたのです。

2013年第二四半期までは良かったのですが、問題はQualcomm Snapdragon 800という様々な面で革新的な新しいハイエンドSoCの登場により発生しました。このSoCは素晴らしいパフォーマンスを発揮する一方で、消費電力量がとても多い問題も抱えていました。

HTCなどのメーカーはSnapdragon 800ではなく一つグレードの落ちるSnapdragon 600を採用し、電池持ちの問題をクリアしたのに対し、SHARPはSnapdragon 800を搭載したうえで電池の残量により動作を制限しバッテリー持ちを向上させる手段にでたのです。パフォーマンスと電池持ちをなんとかして両立させようとしたのでしょう。

この手段自体は間違っているわけではありません。しかし、当時のSoC性能ではクロック制限を施された状態でパフォーマンスを発揮することが難しかったように思えます。この時から続く過剰なクロック制限をかけがちなチューニングが、今にまで続くSHARP端末はレスポンスが悪いというイメージの元凶になってしまうことになります。

なお、その後Snapdragon 800を搭載したハイエンドコンパクトモデルであるAQUOS XX mini 303shやAQUOS SERIE mini shl24が登場します。これらの機種はコンセプトはとてもよく、特に303shはデザインが若い層に受けたため売れました。

しかし、4.5インチという画面サイズの小型機にフルHDディスプレイを搭載したためか、灰色画面を表示するとチラつきが気になるというIGZOパネルの不具合(これは初のIGZO機であるSH-02Eから続くIGZOの持病ともいえる症状ですが、多くは個体差レベルでした)やタッチパネルの誤反応などが多発し、SHARP機のイメージを悪くする結果に終わってしまいます。

ただ、不具合を連発しイメージの低下に一役買ってしまったとはいえ小型機は廉価版で十分だという風潮に一石を投じられた存在であったことは確かです。ですので、意義のある端末ではあったでしょう。

その後、Snapdragon 801という安定したsocが登場しました。これを搭載した端末は軒並み評判が良く、それはSHARPも例外ではありませんでした。電池持ちとパフォーマンスを両立させた名機として愛され、今でも使っている人を見かけるほどです。

AQUOS SERIE SHL25やAQUOS ZETA SH-01Gなどの主要な端末ではAndroid 5.0へのアップデートも行われ、長く使える良い端末としてSHARP最後の黄金期を飾りました。現在SHARP製のスマートフォンに好印象を抱いている方々はこの時期に購入した方が大多数でしょう。

IGZO液晶もこの世代のものは概ね評判がよく、本来IGZO液晶は他の液晶に比べて発色が悪くなりがちなのですがこの世代は他社のスマートフォンよりも発色がいいいと言われるほどの完成度を誇ります。

AQUOS CRYSTAL 2

同時期にはAQUOS CRYSTAL 305shという世界初のフレームレス端末が発売されます。この端末はまさしく革新的であり、大々的に宣伝し各キャリアでSprintでの発売額と同価格で販売できればSHARPは一躍脚光を浴びることになったでしょう。

しかし現実は残酷です。独占販売されてしまったことにより販売網がせばまり、さらに独占販売先であるソフトバンクはこともあろうにBluetoothスピーカーを同封した上でSprintでの発売額の二倍で発売したのです。

おまけにシムスロットのバネが壊れやすいという不具合も抱えており、期待の新製品は消費者にぼったくりである上に壊れやすいという最悪のイメージを与える結果に終わってしまいます。

2015年に入るといよいよ経営状態が悪化してきたSHARPは最後のあがきと言わんばかりに倍速液晶の開発を進めます。そのあおりを食らったかどうかは定かではありませんが、2015年夏モデルのAQUOSは視野角が狭かったり電池持ちがあまりよくなかったりと作り込みが甘いように感じられました。 

一応はIGZOのもう一つの持病ともいえる発色の薄さも、S-Pure LEDという新たな次世代バックライトを初めて搭載したことにそより改善したのですがこの時期にAQUOSを購入した人もあまり良い印象をもたなかったかもしれません。

満を持して登場した2015年冬モデル。この時期に該当するのは下記5機種。

  • AQUOS xx2
  • AQUOS xx2 mini
  • AQUOS ZETA SH-01H
  • AQUOS Compact SH-02H
  • AQUOS SERIE mini SHV33

これらの端末はあらゆる面で革新的でした。世界的な潮流である高解像度化戦争およびハイエンドモデルの大型化に真っ向から反発し、リフレッシュレートを従来モデルの二倍である120Hz液晶にし、5.3インチ三辺狭額縁デザインで搭載した大型モデルや、ほぼ同じだけの性能を4.7インチ 三辺狭額縁デザインで搭載した小型モデルを発売します。

 ZETA SH-01H
SH-01H

さらに夏モデルに比べ大幅な視野角の改善をすることに成功し、筆者としては文句なしのフラグシップモデルとなりました。しかしタイミングが最悪でした。この時期はちょうどQualcommが発熱問題を抱えたSoCであるSnapdragon 810/Snapdragon 808をリリースしていた時期でして、共に発熱と劣悪な電池持ちという2つの重大な問題を抱えていました。

性能の代償にかなりの発熱と消費電力の多さを抱えるSnapdragon 810、性能自体が低いうえ、それなりの発熱と消費電力の多さを抱えるSnapdragon 808の二択を迫られたのです。苦渋の選択の末でしょうか、結局後者を採用した2015年冬モデルのAQUOSは性能の低さと電池持ちの悪さに悩まされることになります。

余談ですがSnapdragon 810は満身創痍ながら続いてきたハイエンドarrowsシリーズにとどめを刺したSoCでもあります。いくら初の64bit SoCだったとはいえ、Qualcommの罪は重いですね。

このように、SHARPは黎明期の使い物にならない端末や数々の不具合の悪いイメージという負債を背負っているのです。

新生SHARPの変化

鴻海に買収されて以降、SHARPは経営再建をするべく様々な改革を行いました。

コスト削減に関する改革

新生AQUOSとして「AQUOS R」を発表しました。この機種は3キャリアの統一モデルとして販売。乱立するモデルを1つにまとめることでコスト削減をはかります。

OSアップデートに関する改革

また鴻海はAQUOS Rに対して最低2年間のOSアップデートを保証します。既に販売されているスマートフォンに対しても積極的に行うようになりました。AQUOS Xx3 mini

ソフトバンクから発売されているAQUOSを除いた2015年以降のすべてのモデルにOSのアップデートを提供する予告をし、すでに幾つかのモデルにはアップデートを提供しております。ソフトバンクから発売されているAQUOS XX3 506shにもアップデートを提供したことには驚かされました。

筆者の記憶では、ソフトバンクのAQUOSとしては四年ぶりのOSアップデートとなります。507SH

また、ワイモバイル向けにAndroid Oneと呼ばれるOSのアップデートを二年間保証した端末を発売し始めました。Android Oneとは低価格端末でも最新のAndroid OSを使ってもらおうというコンセプトの端末なのですが、今まで日本では販売されておりませんでした。第一号の口火を切ったのが鴻海率いる新生SHARPですね。

量販店の店員などに話を伺うとどうやらかなりの数が売れているようです。iPhone 5sと並んで目玉商品になっていますね。低価格でありながら最新のOSが使える端末というものは需要があるようですね。SHARPが経営再建をするにあたって意外な救世主になるかもしれません。

広告改革

AQUOS R

ようやく広告を打つようになりました。電車の中吊り広告などで見たことのある方も増えてきていると思います。

AQUOS Rのサイトは黒を基調としたデザインになっています。また、発表会の際にAQUOS Rのスライド背景が黒だったことから、これからのAQUOSブランドのイメージカラーは黒になるのではないでしょうか。OPPOなどのように見るだけでどのメーカーかわかるイメージカラーというものはそれだけで宣伝効果を発揮するため、SHARPもおそらく採用してくると思われます。

発表会の開始

今までSHARPは単独での発表会を開いていなかったのですが、今年から開くようになりました。発表会はメディアの注目を集めた上で新機能をアピールできる貴重な場ですので、ぜひとも続けていただきたいものです。

復活の足がかりとなるのは

冒頭に書いたように、IDCが発表している国内のメーカー別スマートフォンシェアを見ますとSHARPは2位の座をめぐってSONYとは熾烈なシェア争いを繰り広げていました。

暴論が過ぎるかもしれませんが、ブランドイメージを保つために頻繁に広告を打っているソニーモバイルと、お世辞にもまともに宣伝しているとは言い難いSHARPが同じ土俵に立てていたというのはスマートフォン自体の魅力で勝っている部分があったからだと言えるのではないでしょうか。

それは広告をしっかりと打ち、過去のイメージを塗り替えるような戦略を取れば十分に復活の可能性があるということを意味します。高価格路線に活路を見出すのならば徹底したブランドイメージの固定化を進め、広告を適切な形できちんと打つことが重要です。

また、OPPOはカメラと急速充電という2つの機能を明確にアピールし、ブランドイメージの固定化に成功しました。SHARPもカメラと液晶などを二本柱に広告を打つとブランドイメージを固定化することができるかもしれません。

またAndroid Oneは京セラとSHARPが販売していますが、売上比率2:8で、SHARPのほうが売れているともいわれています。

広告次第でSHARP製スマートフォンが復活を果たす可能性は大いにあるといえます。鴻海が次にどのような戦略を打ち出すのか楽しみですね。

長々と読んでいただきありがとうございました。

この記事を読んで少しでもSHARPに興味を持っていただけたら幸いです。

筆者:沢田渚

[参考サイト]
2016年第3四半期 国内携帯電話・スマートフォン市場実績値を発表
シャープが凋落した本当の原因がわかった
SHARP IR イベント
SHARP AQUOS R
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